◆美術評論家談
若手日本画家・黒岩善隆さんの描く日本画をはじめて目にしたとき、その画面から伝わってくる山々や樹々、流れる水の表現など、全てにこれだけの自然美を作品に表現できる作家がいたのかと新鮮に思ったのは言うまでもない。その作品からは水の流れ、そして全体に流れる空気、風が感じられるようで心地よい感動が伝わって来たのをはっきりと憶えている。
わが国には、世界に誇れる美しい自然がある。その自然は四季折々にその美しい世界を映し出し、見るわれわれの心をつかんで離さない。自然からは多くの恵みを受け、人々はその自然を大切にしてきた。
休みを利用して東京を後にし、ふと目をやった風景に見とれ、しばし時間を忘れたことはないだろうか・・・
時間に追われた東京の雑踏の中で仕事に忙殺されているわれわれにとってその景色ほど心の中まで洗われるものはない。その感動は日頃のストレスなど忘れさせてくれる。風景はそんな力をもっているものなのだ。
風景への憧れ・・・
尾瀬ヶ原のここは、至仏山の麓です。山からの風雪をまともに受けるため、ちょうど人が腰が引けながらも細々と寄り添いながら立っているように”ダケカンバ”が並んでいます。
尾瀬ヶ原は、5月初めでも山から吹き降ろす風がまだまだ冷たく感じますが、6月にもなりますと、時折り、何処か『春』を感じさせる、やわらかい、好い香りのする風が吹き始めます。厳しい冬の風雪に耐えたダケカンバはようやく訪れた春の風を感じ、ゆっくり、ほっと一息ついているように見えます。そして尾瀬ヶ原が春の風に包まれる頃、ダケカンバの息吹、そして尾瀬の息吹を感じ、いよいよ尾瀬ヶ原に水芭蕉が真っ白な花を飾ります。
やさしい画面より溢れ出る、水芭蕉に飾られた尾瀬ヶ原の、木々の息吹・やわらかく清々しい空気・優しい風の心地よい感動に浸り、その心地よい感動が、普段の荒涼とした時間をもやさしく包み込みます。
作品紹介 美術市場発表価格号12万円