小杉放庵3
今日も再び小杉放庵さんの作品の紹介をしたいと思います。
この作品は、
遠くに塔を望む柳の木の下で閑談する二人の人物を描いた日本画です。
おそらく大正中頃に制作された小杉さんの日本画の中でもかなり早い時期の作品だと思われます。
洋画家であった小杉放庵さんは、時代が大正にかわる頃から次第に日本画も描き始めるようになったそうなのですが、
当時の日本画作品には、きわめて縦長の画面を好んで用いたそうです。
さらに、その画面を大きく上下に三等分した大胆な構図で描くという特徴があるようです。
この作品でも、画面の中央には柳の木というインパクトのあるモチーフを配置し、
柳の木を中心に、画面を上下に分割し上に遠景の山や塔を描いたり、下には近景として向き合っている二人の人物が描かれています。
この構成方法は中国や日本など東洋の絵画の伝統にはほとんど見ることのできない画面構成であるそうです。
遠景中景近景で描いているまた、しっかりと差をつけながら描いていることがすごく美しく、また、繊細に描かれている様子から、そのシーンそのシーンで描き終えてから全体を中心に合わせて描いていったのではないかななんて予想します。
柳の木がやっぱりインパクトがすごく残る作品になっているのは間違えないんですが、なぜここまで強力な印象をつけようとしたのかが少し疑問に残るところだなと思いました。
描き方は、同じ色調のなかでもその遠近感をもたせた縦長の構図をうまく利用しての美しい構成の作品になっています。