横山大観の掛け軸の市場価値とは?
横山大観の作品には、額装の作品、掛け軸の作品、屏風の作品、巻物の作品など、飾る場所や仕立てる方の好みなどによって、様々な形式の作品があります。掛け軸の作品には、主に額装などに仕立て直しのしやすい横長の掛け軸、額装には仕立て直しづらく床の間以外では飾ることの難しい縦長の掛け軸があります。昔は、日本家屋であれば和室があり、その和室には床の間が作られ、その床の間には掛け軸などが室礼られていましたが、近年は床の間や和室もない家屋が増え、掛け軸を飾る場所が極端に減ってしまっています。

二階堂美術館蔵
掛け軸の作品は、額装の作品と違い、飾る作業をおこなう時に作品の全体、画面がいっぺんに見えるわけではなく、掛け軸の構造上、普通は上の部分から少しずつ絵が見えてきます。それが大変に奥ゆかしく、その上品にだんだんと見えてくる作品は、色気のある雰囲気をまとい、より良い作品に見えます。掛け軸を飾る、掛け軸を伸ばしていきゆっくりと作品があらわになる至福の時間は、掛け軸ならではと思います。こういった掛け軸ならではの大きな魅力がありますが、住環境の変化には抗えず、需要が減ってきていることは事実で、相場価格は軟化傾向といわざるをえません。
どのような掛け軸作品が美術市場に出ているのか
横山大観の作品といえば、「富士山」や海原に浮かぶ朝日を描いた「海暾」、中国の故事や古画に題材を得た「周茂叔」などの人物画、蓬莱山など、様々な作品がありますが、それらのどの作品にも掛け軸に仕立てられた作品はあります。横山大観の作品の制作年代とは関係なく、その横山大観作品が仕立てられた時代によって、額装や掛け軸など、仕立ての方法が異なるだけで、この図柄だと掛け軸の仕立てですといった決まりごとのようなものはありません。

横山大観記念館蔵

水野美術館蔵
横山大観の掛け軸の需要とは
住環境の変化により、和室のない家、床の間のない家が増えて来ており、掛け軸を飾りづらい環境が増えつつあるのが現状です。横山大観の作品の需要や評価といったものに、それらは直接的に関係はしませんが、欲しいと思った作品が掛け軸の作品であった場合、飾る場所のことなどを考えると躊躇してしまう様な状況もあるかと思います。掛け軸のままでは飾りづらいから額装に仕立て直すことも考えられます。掛け軸から額装に仕立て直しをするにも、表具屋さんなどの職人さんなども減ってきており、経費は高額になります。額装の作品に比べると、掛け軸の作品は、管理方法など保管や取り扱い方法などに気を遣う場面も多くなります。

メナード美術館蔵
以上のことなどを踏まえると、掛け軸の作品の需要は減ってきていると言わざるをえず、横山大観の作品も例外ではなく、横山大観の掛け軸の作品でも、特に縦長の掛け軸の作品の需要に関してはそれが顕著です。
横山大観の掛け軸〜高額な査定額になる作品とは〜
横山大観の掛け軸の作品で、高額な査定額になりやすい作品のポイントは以下のとおりです。
・需要の多い人気のモチーフ「富士山」などであること
・掛け軸から額装に仕立て直しやすい横物の作品
・本紙にシミや焼け、カビなどがなく、掛け軸の表具自体も綺麗な作品
・共箱や横山大観記念館による鑑定登録がある作品
・出品歴のある大作など
モチーフ
横山大観といえば富士。横山大観の作品は、時代の思潮と密接な関係がみられます。富士の図柄でも、戦時中は国体を象徴する画題として「神州第一峰」「日出処日本」「神国日本」「心神」「乾坤輝く」「神州富士」などの画題の作品がみられ、戦後は「霊峰富士」「東海仙山」「三保富士」などの画題がつけられた作品がみられるようになります。昭和25年、横山大観が85才になる最晩年の時期には、富士は縁起の良い画題として好まれ、吉祥のしるしである旭日や松、鶴などと一緒に描かれる作品が多く見られます。これらの「富士山」に関係する掛け軸の作品類は、横山大観の作品で代表的なものになり、高額な査定額になる作品類といえます。また、美しい日本を象徴するような「富士」「桜」「紅葉」「旭日」などの掛け軸作品類も人気があり、高額な査定額になる作品類のひとつといえます。
制作年代
初期の頃の作品は、古画に倣い制作している作品や、中国宋時代の作家に倣った作品類なども多くみられます。それらの作品類は、資料的価値は高いものの、縦長の掛け軸の仕立てが多く、一般のコレクターに対しては、図柄や体裁などの理由から、需要は低くなりがちで査定値は比較的抑えられたものになる傾向があります。最初期ではありませんが、比較的初期に近いイメージである朦朧体の作品類に関しては、明治40年以降に評価され、近年では横山大観を代表する、わかりやすい技法として認知されており、この東洋画で重視されてきた筆線を排除して色をぼかして重ねたり、金泥や銀泥を刷いて大気や光のおもむきを表して主題を画面全体で作りあげた新しい日本画である朦朧体とよばれた技法を用いた作品類は人気があり、これも高額な査定額になる作品類のひとつといえます。
大観は長い創作活動を通じて画風を変化させており、特に円熟期(昭和初期〜晩年)の作品は完成度が高く評価も安定しています。作品や箱書きに制作年の表記がある場合は、それがいつ頃描かれたものかを確認することができ、重要な要素になります。
また横山大観の作品は、落款が年代で使い分けられており、制作年代を落款で読み取ることが可能です。落款の種類によって大まかには以下のように分類されます。
つの落款:昭和5年後半〜昭和14年前半(62〜71歳)
抜け落款:昭和14年中旬〜昭和22年中旬(72〜79歳)
最晩年の落款:昭和22年中旬〜昭和32年(80〜89歳)
昭和14年から昭和22年までに用いられた落款「抜け落款」時代の作品は、横山大観の名声が確立され横山大観作品のなかでも最も脂がのっている時期といわれ市場での評価が高くなる傾向があります。

作品状態の良さ
掛け軸は、紙や絹など繊細な素材が使われているため、経年の影響を受けやすくなります。掛け軸の作品にシミやカビ、焼けなどによる変色、破れ、虫食いなど、鑑賞するうえで気になってしまうような瑕疵がある場合は評価価格に影響します。横山大観の掛け軸の作品の場合、大まかに分類すると、絹本に描かれている作品と、和紙に描かれている作品があります。絹本に描かれている掛け軸の作品は、もともとの絵絹の質にも影響され、洗浄(クリーニング)が行われたことのある作品には、絹ムラや墨が薄くなってしまっている様な作品もみられます。新規で掛け軸の表装をおこなったり、クリーニングなどである程度のシミやカビなどを除去して綺麗な状態にすることは可能ですが、それらにも大きな経費がかかってしまうため、横山大観の掛け軸の作品に、カビやシミ、焼けなどが出ないよう、保管方法に気を付け、少しでも掛け軸に異変を感じるようなことがあれば、早めに対処されるのが好ましいです。
箱書き・鑑定証書の有無
横山大観の掛け軸の作品につきまして、多くの作品では、横山大観自身が箱書きをしている「共箱」が付帯しています。「共箱」とは、作家本人が掛け軸の蓋の部分に、作品名と落款、押印をしたものをいい、この作品は私本人が描いた作品ですと証明するものになります。横山大観の掛け軸の作品にこの「共箱」が付帯しているということは、作品の真贋証明や、作家自身が自分の作品と認め世に出しても恥ずかしくないものを描いたんだという気概が感じられ、それらはプラスの評価になります。ただし、それら共箱にも本物と偽るために作られた悪意のある贋物が多くあるため、現在は共箱を含め作品の真贋を鑑定する所定鑑定機関が制定されています。横山大観作品の場合は、横山大観記念館で鑑定受付が行われており、鑑定の結果、真作であるという事が認められると真作登録がされます。横山大観作品の場合、現時点では、所定鑑定機関から一般的な体裁の鑑定証書の発行はなく、掛け軸の下側、下軸に登録番号が記載され割印がされます。それらの有無は真贋保証になり、評価価格に大きく影響します。
横山大観の掛け軸の相場
横山大観の掛け軸の作品の相場価格について、横山大観の作品に限らず、掛け軸の作品全般にいえることですが、日本家屋でも床の間のないお宅も増えており、掛け軸の作品の需要は減ってきています。掛け軸の作品を飾りたくても飾ることのできる適当な場所がありません。作品の体裁に限っていえば、横物の作品であれば、掛け軸から額装に仕立て直しをして、掛け軸では飾ることが困難だった場所にも、作品を飾れるようにすることができます。いわゆる、掛け軸らしい縦長の掛け軸の作品の場合は、額装に仕立て直しすることは可能ですが、額自体が非常に大きくなってしまう場合も多いですし、一般のご家庭で飾るのは、違和感のあるサイズになりがちです。そのため、縦長の掛け軸の相場価格は軟化傾向が顕著です。
作品のモチーフ別に見る相場の違い

メナード美術館蔵
横山大観の代表的な作品である富士山を描いた作品類は、やはり需要が高く、相場価格は高くなります。他には、縁起が良いとされるような図柄の作品類の相場は高いものが多くなります。
サイズや構図による相場の違い
大きすぎる掛け軸の作品は、一般のご家庭には飾りづらく需要は安定しておらず、相場価格にも影響します。掛け軸から額装に仕立て直しのできるような、横長の構図で、額装のサイズにして20号サイズ以下くらいの作品類は需要が多くなり、相場価格も堅調です。
売却方法による相場の違い
横山大観の掛け軸の作品について、売却方法として考えられるものは3つあります。美術商による買い取り、オークションへの出品、委託販売があげられます。相場価格は、作品そのものの出来や状態など作品自体に起因するものだけではなく、外的要因によっても変わります。景気が悪くなれば、美術の市場はそれらの影響を強く受けます。時機、季節なども影響します。例えば、桜の図柄の掛け軸を売るのであれば、夏場などではなく、これから桜が楽しめる季節が来ることを少し思い始めるような、そんな季節の方がうまくいきます。売却方法やその売却方法に至るまでのプロセスなども影響します。個々の掛け軸の作品にとって、どの様な売却方法が適当か、その方法は個々の掛け軸作品によって変わり、方法によって価格も変わってきます。
相場を正しく知るための相談先とは
横山大観の掛け軸の相場価格について、正しい相場価格を知ることは重要です。また、作品にとってプラスになるような材料をきちんと発見してあげることも大切です。作品自体の出来などによって相場価格は大きく変わって参りますが、作品に付属する共箱や識箱などの箱書きや鑑定証書、レゾネとよばれる総画集や展覧会の画集に収載されているかどうか、展覧会への出品歴があるかどうか、掛け軸の仕立てや表具の質など、どこの表具屋さんで仕立てられた掛け軸かどうか、状態は良いかどうかなど、様々な細かなことも含め相場価格は変わります。そのため、作品が本物かどうかの真贋の確認作業はもちろん最重要になりますが、そのほか状態などの検品や、画集などに収載があるかどうかの確認、仕立てられた表具屋さんがどちらかなど、作品の評価を高めるような可能性があるものをきちんと調べ作業を行う必要があります。これらの作業は、横山大観の作品や掛け軸そのものについて知識がないとできませんし、多くの資料がないと難しくなります。横山大観の掛け軸の取り扱い経験が多い、専門的な知識をもつ美術商に相談されるのがよろしいでしょう。
横山大観の掛け軸の作品を売る際の注意点
先にご案内した内容を踏まえて進めていただきますと、トラブルや嫌な思いをすることなく、より良い方法で進めると思いますが、主な注意点として以下3点ご案内します。
箱書き・鑑定証書の有無を確認する
横山大観の掛け軸の作品の場合は、真贋を証明するものとして、共箱、大玄(横山善信)や横山美代子などの識箱、現在の所定鑑定機関である横山大観記念館の鑑定登録などがあります。これらは、作品の真作を証明するものとして重要です。横山大観の掛け軸の作品にこれらが付属している場合は、これらの存在の有無も併せてお問い合わせ頂くのが最良です。ただし、これら共箱・識箱・所定鑑定機関の横山大観記念館の鑑定登録などにも贋物が存在します。そのため、それらの付属品も含め真贋を確認してもらうことが重要になって参ります。また、共箱や識箱・鑑定登録がないからといってダメな作品ということはありません。もしそれらがなく、どうしようかとお悩みの際は、所定鑑定機関での真贋鑑定の手続きをする前に、まずその旨をご相談いただければ、鑑定登録に出すべき掛け軸作品かどうかアドバイスいたします。
劣化が見られても手を加えず専門家に相談を

二階堂美術館蔵
横山大観の掛け軸の作品は、最晩年の作品だとしても、70年近くの時代を経ているため、新品同様というわけにはいきません。どんなに良質の表具で仕立てられていても、保存環境が良かったとしても、経年劣化は避けられません。制作年代や、作品の評価価格、悪くなってしまった作品状態の程度によって、どんなところでどの程度の修復やクリーニングを施すべきか否か、個々の作品によってベストな選択肢は変わります。繊細な掛け軸作品では、下手にいじってしまうと取り返しのつかない状態になってしまう場合もあります。真贋鑑定の手続きと同様に、どうしたら良いかお悩みの際は、まず弊社にその旨をご相談ください。
信頼できる美術商を選ぶ
横山大観の掛け軸について、売却をお考えの場合は、作品が本物かどうかを調べる、正しい相場価格を知る、評価価格にプラスになるような材料をきちんと用意することが大切です。横山大観や掛け軸そのものなどに知識があり、多くの資料を持つ、横山大観の掛け軸の取り扱い経験が多い、専門的な知識をもつ美術商に相談されるのが最良です。また、東京美術協同組合、全国美術商連合会、現代美術商協会などの美術関係の団体への所属の有無や、その加盟している団体がどのような組織かなどもご確認いただくのがよろしいかと思います。加盟している団体がきちんとした組織であれば一定の信頼性が担保されます。他には、作品の評価価格の根拠をきちんと説明してくれる美術商、鑑定証書を取得する必要があるか否かの判断や、鑑定証書が必要だった場合は鑑定証書の取得のお手伝いをしてくれる美術商をお選びいただくのが適切です。
横山大観の掛け軸相場については、お気軽に花田美術までご相談ください。
先にもご案内いたしましたとおり、個々の作品によってベストな方法は変わりますし、様々な条件によってもベストな内容はかわって参ります。花田美術では、横山大観の掛け軸、美術品の査定のご相談を承っております。横山大観の掛け軸作品の相場価格の幅は非常に広く、お話しだけや作品のお写真だけなどでは判断が難しい作品類も多いため、実物を拝見することが一番正確なご案内ができお話がスムーズです。ただし、特に初めて問い合わせをしようと思われている方の場合、不安があり、問い合わせをためらっている方も多くいらっしゃるかと思います。弊社は昭和58年の創業から長きにわたって様々な作品の買取、販売などを行ってきた実績がございます。査定や買取のご相談がございましたら、作品を拝見した上で正確な査定をし、お客様のご希望にそって作品の売却方法として適当な売却方法等をご提案いたします。無理にご売却をおすすめしたり、ご提案内容を強制するようなことは一切ございませんのでご安心ください。
東京都中央区銀座6-3-7アオキタワー1階には弊社の画廊があり、査定をご希望の方は作品を直接お持ち込み頂けます。信頼のできる美術商での買取、ご売却をお考えの方は、ぜひ花田美術までお気軽にご相談ください。