2019年05月15日(Wednesday)
前田青邨
歴史画家
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歴史画家としてスタートした青邨は、大和絵の技法をベースに南画、琳派、仏画と幅広く古典絵画に学んだ伝統技法を駆使し、歴史画に明晰な造形骨格を与えることによって、その近代化をはかる一方、風景、風俗、花鳥と次々に新しいジャンルに挑戦し、戦前すでに、各分野で高い水準を獲得している。戦後さらに人物画の領域をも切り拓きながら、卓越した技巧はいっそう磨きをかけ、「ある時期は、私も歴史画は古いと思い、他の主題に転向しようとして、さんざん苦しみました。しかし結局、現代の人物を描くのも、歴史人物を描くのも、同じことだという考えに到達して、安心感を得ました」という確信のもとに、時代の流行に左右されることなく歴史画を描き続け、歴史画領域の拡大と深化を実現していった。